朝の食卓は、けっこう忙しい。
なぜなら、お父様は朝が早いし、和食派だからだ。
特に味噌汁にはこだわっている。
「やはり、ダシの素はダメだ。ちゃんと鰹節からダシを取らねば」
というわりには、煮干しダシとか、コンブ、干し椎茸、貝のダシとか、他のダシは苦手だったりするの。
鰹節といっても、パックのものがあるから、それを使えばいいので楽だけど、やっぱりダシの素の手軽さには負ける。
味噌汁さえしっかり作れば、後は漬け物や味付け海苔、とにかく一汁一菜で事足りるので、手間がかからないと言えばかからないけど。ただ、やっぱり納豆は駄目みたい。
さらに、追い打ちをかけるように白崎さんが超偏食なので大変だ。
「肉類……ダメなんだよね。ほら、元がウサギだから。野菜ならＯＫ。でも、いつも同じものばっかりだと飽きちゃうんだよね」
それなら、適当に生野菜を丸ごとテーブルに並べても良さそうなものだけど、それはわたしの性格が許さない。
毎朝、いろいろな種類の野菜サラダを考えないといけない。
取り合わせや、ドレッシング。
おかげで、うちの冷蔵庫には、わたしの作った特製のドレッシングが十数種類ある。
最後に、わたし自身は洋食派。
もともと西洋ドールだったせいなのかも知れないけど、こればかりは譲れない。
正式にはいろいろとあるらしいけど、わたしは手軽にトーストと飲み物。紅茶だったり、野菜ジュースだったり、果物のジュースだったり。後は気分でハムエッグとか、スクランブルエッグとかも食べることがあるけど、大抵はトーストと飲み物で充分。
テレビはつけない。その代わり、公共放送のラジオだけをつけている。ニュースを聞くため。お父様はしつけに厳しいのだ。で、みんな行儀よく食べている。
たまに一言か二言「今日はちょっと忙しくなるぞ」とか、「水晶ちゃん、お昼はバジルのドレッシングがいいなぁ」とか、「あ、今日買い物行かなくっちゃ」とかの、どうって事のない会話が続く。
やがて、「ごちそうさまでした」
みんなで言い終わると、後片付け。これは、白崎さんも手伝ってくれる。
手際よく、皿を洗ってくれるので助かる。
お父様は、朝刊を読み始める。いつもの朝。
今日も良い天気。
でも、その日は少し違っていた。
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