「そう。そんなことがあったんだ。確か、その星井……美希って子？ 名前を聞いたことがあるような」
お父様が首をかしたまま、考え込む。
それに呼応して、黙々と煮込みを食べていた白崎さんが不意に声を上げた。
「ああ、その娘なら今夜８時の歌番組に出ますよ。まだ中学生なのにグラマ……いや、体格が良くて、最近人気急上昇中のアイドル、ってとこでしょうか。先日の水泳大会では、ポロリも堂々と……うふふっ」
お父様が白崎さんを、冷たい目線で軽く睨み付けた。
「あ、すみません。つい」
早速、蒼星石が疑問に思う。
「ポロリって、何のことなの？」
「あー、それはまだ、知らない方が良いというものだよ、蒼星石」
お父様がフォローする。
「うん。でも、わたしも意地悪してしまって。反省しています。それより、蒼星石、今日もこのスコッチエッグ、最高に美味しいわ」
「うん。ありがとう」
確かに、スコッチエッグは結構難しい。なぜなら、一度茹でたタマゴを挽肉入りの具でくるんでから、もう一度焼いたり揚げたりするのだから、中のタマゴがどうしても固ゆでになり、パサパサしてしまう。ところが、蒼星石の作るそれは、中のゆで卵がまるで茹でたてのように瑞々しく、程よい柔らかさの肉汁をたっぷり含んだ分厚い衣と合わさって、絶妙な歯ごたえと味で家族に人気だ。
「まぁ、とにかく学校で何があったのか知らないけれど、あまり気にしない方がいいと、僕は思うよ。その子も何か事情があるのかもしれないし」
蒼星石がアドバイスをよこしてくれた。
確かに……そうね。ちなみにポロリのことは忘れてくれたみたい。
でも、ポロリ、って一体何？ 何となく、わかりそうな気もするけれど……。
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