ところ変わって、ここはとある注文住宅。
１００坪ほどの敷地に、住宅展示場で見かけるような洒落た５０坪ほどの広さの家。
外壁は陶器製のサイジングで、しっかり断熱を施した完全気密の最新式のものだった。築５年ほど。およそ普通のサラリーマンなら、まず建てられるのは限られた人々に違いない。
だが、ここに住んでいる家族の長、すなわち父親は一部上場企業のサラリーマン。課長に昇進して間もない３０代。少なくとも、普通の出世コースには乗ってはいたが、それでもこれほどの一戸建てを建てられるほどのゆとりはまず考えられない。
理由は、親から譲り受けた土地に援助付きで建てられたからである。加えて、社内住宅ローンの恩恵を得て、かなりの低金利で残りの建築費を借りられたおかげである。
ひとことでいって、恵まれた家庭であった。
家族構成は４人。
それぞれ一流大学を出た両親に、姉弟。
父親も母親も容姿に恵まれていたので、当然のことながらその子供たちもその恩恵を得ている。
姉の方は中学生で、来年には受験を控えていた。成績は良く、学校でも人気があり、文化祭では学年プリンセスに選ばれたほどであった。
そう。ここは桑田由奈の家である。
時は夜。
由奈は宿題と明日の予習を終え、入浴して体をきれいにすると、父と母と弟にごく自然にお休みを言うと、ベッドに入った。
最近、寝付きが悪い。
それには由奈自身も解っている理由があったが、それを押し殺して無理矢理眠ろうとする。けれども、それにも限度がある。
悶々と数時間、寝返りを打ったりため息をついたりしていたが、ついに由奈は誘惑に負けた。
「……」
いけない、と思いつつも手が自身の股間へと向かう。
背徳感と共に、かすかな、それでいてしっとりとした期待が全身を包む。と同時に、鼓動が早まっていくのを感じていた。
そっ、とパジャマ越しに最も大切な部分を撫でる。初めのうちはさほど感じなかったが、何度もさすっているうちにくすぐったいような、もどかしい気持ちになってきた。
いつしか指は小さなレースをあしらった、ちょっとおしゃれなピンク色のパンティの中へ。かすかに茂り始めたその若草の狭間に、柔らかくぬっとりとした感触。
「あう」
思わず押し殺したように声を上げてしまう由奈。
まだ少女期を脱していないので、一つ目の隆起が高く、その内側の谷はまだ未成熟であったが、感度はすっかり大人並みだった。早熟といえよう。
恐る恐る、谷間を広げようとする。人差し指と薬指で……中指が、つい丘の果てにある突起を刺激しようとするのをこらえると、ゆっくり円を描くように中の谷をなぞり始める。
「くっ、ううっ、くう」
刺激に慣らされたバルトリン線がさっそく、愛液を分泌し始めると、微妙な地帯を潤し始めた。
その証拠に、由奈の指先はくちゅくちゅと軽やかな音を立て始めていた。
「う、ふ……さく・らだくうん、桜田くん……ジュン」
快楽にしびれ始めていた由奈の想いは、ジュンを想像していた。
女性のそれは男性と違い、具体的なシチュエーションを必要としない場合もあるようだ。ロマンチックなイメージがあればそれでいい。
今、由奈はジュンの縫ってくれた薄い透明なヴェールに包まれて、ジュンの熱い愛撫を受けているつもりだった。
「ジュンくん、うん……そこ」
空いた手で、胸をまさぐる。おそろいのピンクのブラがはだけ、形の良い、この年頃にしては平均より豊満な乳房が現れる。お椀型で、垂れていないタイプ。軽くさすりつつ、人差し指と親指で乳首をかわいがる……感じる。
そうして、数十分が経過した。既に由奈の顔はすっかり上気して、かすかに大人の女性の色香すら放ち始めていた。全身から、女性特有の甘酸っぱい香りを放つ。
それでも、成人向けゲームよろしく、ベッドの上で全裸になり、なにさえぎるもの無くあられもないポーズで自慰にふけるような真似はしない。
あくまでも、シーツを被ったその中での秘め事だ。
「だめ、ジュン。そんなところ」
体中を甘い陶酔感にどっぷりと漬けながら、ついに誘惑に耐えきれず、最も敏感な部分、つまりクリットを刺激し始める。
かなり興奮しているので、勃起し、包皮からその可愛い小豆大の頭を露出させていた。初めは指で刺激していたが、由奈はやおら枕の下からあるものを取り出すと、スイッチを入れた。
ヴィイイイイン……
それはピンクローターだった。
好奇心からWebの通信販売で購入したものだったが、ジュンのことを想って行為に浸るようになってから使い始めている。
既に由奈はシーツの中でパジャマを脱ぎ、ブラから胸をはだけ、おしゃれなパンティはスラリとした綺麗な足のくるぶしでくしゃくしゃの布の固まりとなっていて、胸からお腹にかけてくびれを含んだ滑らかなラインは熱い股間へと繋がり、キュートなお尻の方まで愛液がこぼれ溢れていた。シーツには、汚してしまって両親に知られないように、バスタオルを敷いてある。
「ジュン……由奈にこんなもの使わせて……憎たらしい」
振動するローターをクリットにあてがう。
「あっ！……」
ぴくり、と体が電流に打たれたように反応して。由奈の想いはジュンであふれかえっていた。そして、それは由奈の股間にあふれる愛液の量にも反映されていた。
「ふうん、ああっ、あうん、あっ、ああん……あっ、あー」
可愛い由奈の澄んだ声が、くぐもってシーツから漏れる。だが、各部屋同士の防音は充分だったので、その声が隣の部屋の弟の耳にはいることはない。
由奈の膣壁からも愛液があふれ始めていた。膣口からじわりじわりとにじみ出てくる。けれども、大胆に指を入れるようなことはしない。まだ、怖いのだ。
けれども、由奈はいつかその奥へと、ジュンそのものが深く挿入されるであろうことを期待し、かつ信じていた。
（だって、わたしだから）
さすが学年プリンセスに選ばれただけはある……強力な自尊心である。
いつか訪れるであろう、ジュンとの逢い引きを確信する……いや、しようとする。
自信はあるものの、一抹の不安が襲う。ジュンのそばにいつもくっついているあの女、巴の存在だった。が、それはすぐに打ち消された。
二つの腕では、同時に胸と、それ以外の肌をまさぐることと、姫所の刺激しかできず、もどかしい。背中に、ジュンのぎゅっと抱きしめる荒々しい手がほしかった。他にも、ジュンの荒い吐息と熱い体温と荒い肌、由奈への賛美のささやきも。
けれども、若さが肉体の快楽を最優先させた。じきになにも考えられなくなり、一気にフィニッシュへと。
「あうん、あぅ、ああっ、ああっ、あっ、あっ、あーっ！」
由奈のヴァキナは脈打ち、その奥の子宮がビクビクいって。
全身を硬直させ、ブルルッ、とその小さな体を細かにけいれんさせつつ、由奈は達した。後は、荒い息が収まるのを待ちながら、余韻に浸ろうとする……しかし。
「ふうん。まぁまぁね」
その直後、由奈の耳元に誰かのささやきが。
「えっ！？ 誰」
瞬間、由奈は弟が自分の部屋に入ってきたのかと思った。
なぜなら、弟が最近由奈の体に興味を持ち始めて、由奈の下着や靴下の匂いを密かに嗅いでいたりするのに気づいていたからだった。
だが、それは杞憂だった。けれども、新たなやっかいごとではあった。
「ビックリすることはないわ。あなたは美しい。そう、まるで花開く前のつぼみのよう……その花、わたしが開花させてあげるわ」
声の主を確かめようと振り向いた由奈の目に、自分から見て左側の目に薔薇の花が咲いている人形……いや、少女の顔が飛び込んできた。
「あなたはあの時の……」
じわりと、それでも急速にあの時の恐怖が心の底から沸き上がってくるのを由奈は感じていた。
「誰？ 誰なの」
「わたしは雪華綺晶……あなたの力が欲しい、欲しいわ。くれたら、もっと、もっともっと気持ちよくしてあげる」
そう言うと、恐怖に怯える由奈を和らげるかのように、いつもの不気味な笑顔ではなく、女性を引き込み虜にしてしまいそうな穏やかで優しい、それでいて悩殺的な笑顔で、雪華綺晶は由奈に微笑んだ。
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